先出しジャンケンをしよう
平日の昼間は都内の会社に勤めているんだけど、電話応対の多い業務で、毎日色々な人と声だけのコミュニケーションを取っている。
内容はあっさりした案内からこってりしたクレームまで様々なんだけど、内容問わずお客さんの態度もさまざま。
上から目線で話してくる人、無理な要求を通そうとする人、お客さんの話をわかって当然だと思って突っかかってくる人…etc
会社とお客様の構図があるから当然といえば当然なんだけれども、それをとっぱらったら普通の人間同士。もちろんこっちにも感情だってある。
こちらは平静を装うことは出来るけど、やっぱりイラってすることもあるし、案内したくないなって思う人がたくさんいるのは正直なところだ。
でも今日は珍しくこちらを気遣うお客さんを対応したんだけど、あまりにも自分の感情が動いて、行動が変わってしまったのでその事をちょっと書いてみる。
低姿勢で感謝あふれるお客さん
なかなか今日は忙しくて、ルーティーンな案内を繰り返していたさなか、そのお客さんから電話が入った。
「お忙しいところ申し訳ない、大した質問じゃないんだけどちょっとだけ聞いてもいいかな。」
声は50代くらいの男性で、こんな冒頭から始まった応対なんだけど、教えてくれて当たり前っていうスタンスの人達ばかりの中で、こんな低姿勢で電話をかけてくるひとが珍しい。
こんな人もいるんだなと思い、こちらの姿勢も正される。
そこからいつも通り質疑応答で、お客さんの問題をクリアにしていくんだけど、毎回「そうなんだ、ありがとう」と感謝の言葉を添えてくれる。
やるべき事をやっているだけなのに、なんだかすごく嬉しくなって、いつも以上に丁寧な対応、普段ならしない案内までどんどんしてしまうんだよね。
その度にお客さんは喜んで、「俺にはよく分からないから丁寧に教えてくれて助かるよ」なんて、お世辞でも嬉しい言葉を言ってくれる。
そして最後の質問が終わったら、「あなたが出てくれてよかった、ありがとう、また困ったら連絡させてもらうね」と最後まで感謝の言葉を言い続けてくれた。
電話が終わった時に、思わず「すげーなぁ」と言葉が漏れてしまうくらい素敵なお客さんだった。
お客さんが教えてくれたこと
全然大したことない、よくある話なんだけど、普段なら感じることのない幸せな感情をこのお客さんは作ってくれていた。
このお客さんは僕に何をしたのか。
僕はいろんな人と対応する上で、いろんな反応があるから、なるべくフラットに、そしてどんな人が来てもいいようにと構えてしまうことがある。
相手の出方を見て、対応を変えてしまうんだ。
でもお客さんは違った。
僕がどんな対応をするにしても、絶対に低姿勢だったし、どんな説明にも感謝をして、何なら僕のいい所を常に見ようとしてくれているとさえ感じられたんだよね。
最初はフラットな対応で、別に僕に愛想は無かったはずなのに、最初の挨拶と感謝の言葉で向こうからぐっと好意的に距離を詰められた感覚。
その好意は見事に僕に伝染して、僕の姿勢から応対まで見事に変えてしまったんだ。
相手を知る知らない問わず、好意を持って接する、感謝の気持ちを持って触れるということがどれだけ重要かをまざまざと見せつけられた、たった5分の応対。
もてなす側がもてなされてしまった感覚だった。
先出しジャンケンの効果
このお客さんがやったことは、まさに人間関係の先出しジャンケンだ。
相手の出方を見て、判断をしてからこっちの反応を示すのではなくて、相手がどんな人かは関係なく、こちらからまず好意を示すってこと。
これってなかなか出来ないんだよね。
こっちが好意を示したのにそれ相応の反応がないとちょっと辛いし、恥ずかしさもある。
それをやる前から想像してしまったら、なかなか動けなくなるのもよく分かるし、僕も例外なく躊躇してしまう。
でも好意を持って接してくれた人に対して、少なくともマイナスのイメージを持つことはほとんどないんじゃないだろうか?
こっちが勝手にネガティブなイメージを持って一歩踏み出せないだけで、本当は最初に行為を示せば、多くの人がより幸せにコミュニケーションが取れるようになるんじゃないかな。
いや、嫌な思いをする人の方が圧倒的に少ないはず!
だったらもっと積極的に先出しジャンケンをしたほうがいいと感じたんだ。
なかなかできる人はいないから、率先してやったらその分だけ多くの人と心で繋がれるはずなんだよね。
どんな初対面のコミュニケーションでもそう。
初めましてから言葉を交わす時、相手に好意を持とうと思っていれば、自然と興味が湧くし、質問や意見のやりとりがスムーズにできるようになる。
初対面の人同士が人間関係を簡単により良い形で作るには、一番いい方法だとお客さんから学ばせてもらった。
先出しジャンケンは怖いけど、失うものは何もなくて、実は得るものだらけなんだよね。
やったらやったもん勝ちの先出しジャンケン。
勝ち負けのない人間関係では一番の必勝法なのかもしれないなぁ〜。